龍兵衛のブログ: アサファの面目躍如！

おっす、みなさま、おひさびさです。

もうビザもおりて、キングストンにいます。

つい10分ほど前、男子400mリレー決勝で世界記録でジャマイカが優勝しました！

今、街中すごい騒ぎです！　行き交う車はジャマイカ国旗を掲げ、市内の中心地ハーフウェイでは屋外大型テレビでは永遠と金メダル獲得の瞬間の映像が流されています。

これで、男子100m、200m、女子100m、200mに続き、リレーでもこの小国が金メダル取りました。

カリブの優秀なスプリンター工場と呼ばれるジャマイカが、ついに世界にその実力を見せつけました。

このリレー、何がよかったって、アサファ・パウエルがアンカーで優勝したこと！

ジャマイカスプリント業界の大スターでありながら、昔から大舞台に弱いと言われ、アテネオリンピック、2007年の大阪世界陸上（オレ、見に行きました）でも結果を残せなかった男。そして今回の100m決勝でも、一躍スターダムに伸し上がったウサイン・ボルト（みんなユセインって呼んでる！）を文字通り尻目に5位に沈んでしまったアサファ。

事前の地元の新聞のアンケートでも、100mでアサファはボルトよりも金メダルを取る可能性がある、と答えた人が多かっただけにその失望も大きく、

「プレッシャーに弱すぎる」「男じゃねえ」「国のプライドより金のかかったレースじゃないと本気にならない」「もうアサファの時代は終わった」などなどムチャクチャ叩かれまくり。

今回のリレーで面目躍如です、まわりにいるジャマイカ人たち、「アサファよくやった！」って喜んでます。

北京オリンピックでのジャマイカ勢の躍進、その理由はこれからいろいろ検証されるだろうだけど、やっぱりジャマイカ国内組の成功だと思うのね。

これまで高校を卒業した優秀なスプリンターはアメリカを中心とする設備の整った大学に奨学金とともに移ってジャマイカを離れてしまったけれど、この世代は違う。

100m、200m金メダリストのボルト、100m女子金メダリストのシェリアン、銀メダリストのシェロン・シンプソン、みんなジャマイカを離れなかった。

この国で高校卒業後のアスリートに大学教育と陸上練習をミックスしたシステムの提供が始まったのは1999年。今では"Home Of World Class Athlete "と呼ばれるジャマイカ工科大学内にMVP Track & Field Clubが発足したのがすべての始まり。MVPとは、Maximizing Velocity and Power（スピードとパワー最大限に伸ばす）の略。その言葉通り、21世紀に入ってからこのクラブの練習生はマジックにかかったかのように記録を伸ばし始めます。その最初の成功例がアサファ・パウエル。

このクラブ、前にブログでも書いたけど、去年の11月に許可を取り３日間ほど朝練の見学をさせてもらってた。でも、世界レベルのアスリートを育てるには、とてもじゃないけど設備がしょぼかった。トラックは整備されてない草むらだし、トレーニングルームは日本の中学生レベル。設備じゃなくて、コーチがいい、って言うけれど、このクラブでの練習がどんな影響を与えていたかはいまだに大きな謎です。

これがジャマイカアスリートの強さの秘密、草むらトラック！？

ボルトはジャマイカ工科大学近くの西インド大学。ジャマイカを離れなかった理由として、「寒いところがいやだから」って答えているけど、やっぱりアサファの成功例をみているからだと思うのね。アメリカに行かなくても、設備が整ってなくても、金がなくても、いいコーチと家族と友達と草むらと坂道があれば世界記録を樹立できる事を証明したわけで。

なんでか、は本当にミステリーです、ジャマイカだから、としか今はいいようがない（笑）

ジャマイカの次世代で、国内100mユース記録を更新した期待の高校生ヨハン・ブレイクはアサファの影響を公言しているし、やっぱり世界に出なくてもこーんなローカルで勝てちゃうことを知らしめたアサファとそのサポート陣はやっぱり偉大であると思います。

この国で貧乏から脱するには３つのG、Ganja、Gal（ピンプ）、Gun（ガンマン）しかないって聞いたことがあるけど、次はGoldのGも入ったと思う。

凱旋帰国する彼らが楽しみです、はい。

朝練後のアサファ・パウエル。