際立った個性のある人物にフォーカスを置いたノンフィクションが昔から好きなんです。
大下英治の「田中角栄」とか、溝口敦の「細木数子 魔女の履歴書」とか、
松田賢弥の「逆臣 青木幹雄」、
最近だとフェイスブックを創業して億万長者になった
マーク・ザッカーバークについて書いた
「FACE BOOK 〜世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男」も面白かった。
そんななかで、今、一番ノンフィクションを読んでみたい歴史上の怪傑がいます。
頭山 満。
今年、坂本竜馬がNHKの大河ドラマですごい話題になっているけれど、
竜馬よりもこの人のほうがもっと異色の存在で、スケールのでかい豪傑だと思う。
1855年福岡藩生まれ。
幕末生まれで、坂本竜馬とか高杉晋作など倒幕に動いていた志士たちよりも
20-30年生まれが遅かったため侍として一人前になる頃には
すでに江戸時代は終わっていた。
西郷隆盛を尊敬する血気盛んな男だったが、1877年の西南戦争の時には
前年に起きた士族の反乱「萩の乱」に参加した罪で牢獄中だった。
その後、明治時代に西郷隆盛を敬愛する者同士で
地元福岡で「玄洋社」という自由民権運動の結社を設立。
これから民間の政治活動団体という範疇に収まらない動きを見せ始める。
天皇主義の右翼の走りでありながら、アジアの植民地化に反対。
大杉栄なんかの本気のアナーキストや
のちの総理大臣となる犬養毅なんかとも交流を持つ。
日本に亡命した中国の孫文、インドの宗主国であったイギリスから
懸賞金をかけられて亡命したラス・ビハリ・ボーズなんかを匿い、
独立運動を支援。
最終的にはアフガニスタン、
そして1930年代にはアフリカのエチオピアの独立運動の支援もしていた。
当時イタリアに占領されかけていたエチオピアの王
ハイレ・セラシエと日本の皇族を結婚させる計画もあったそうな。
ただ、その後1937年に日本はドイツ、イタリアと日独伊三国同盟を結び、
イタリアともめる事をよしとしない日本政府の横やりから、
日本人によるエチオピア独立擁護運動はストップしたらしい。
戦前の右翼の黒幕とも、日韓併合の推進者とも言われ、
資金源は支援者からの資金援助や炭坑だったともいう。
善玉なのか悪玉なのか、二元論で語りきれない面白さもある。
でも、それ以上に不思議なのは、
戦前の雑誌で行われた
「日本で一番の豪傑は?」っていうアンケートの一般人の投票で、
一位に選ばれているほど人気があったのに、
戦後は忘れ去られちゃっていることなんだよね。
今の日本ではほとんど知られていない。
かくゆう僕も、
齢90を超えた大正生まれの祖母に教えてもらってから興味を持った。
明治43年生まれでもう亡くなった祖父が頭山満をすごく尊敬していて、
祖母との間に最初に生まれた男の子には「満」って名前をつけたんだって。
当時、日本では「満」という名前を付けるのが流行っていたみたい。
頭山満は日本が戦争で負ける前年1944年に89歳で亡くなっているけれど、
なんで、日本ではこの人の知名度が戦前と戦後で完全に断絶しているのか?
戦前の日本の活動家や政治家すべてがアジアを蹂躙した悪役で、
その日本軍を追っ払ったアメリカをヒーローと刷り込むため、って説もある。
彼のアジア各国への独立支援活動はできれば歴史上隠しておきたかったのかもしれない。
戦前の日本人って何考えてたのか?って、すごいおもしろいテーマだと思うんだけど。
インターネットで見つけた文献によると、
30年代にエチオピアを支援するために、
日本刀とかぬかるみで戦うための革靴をアフリカに送っているという。
昭和の東京の私邸で
インド人とかエチオピア人とか中国人とかの若い革命家を命がけで匿ってた姿を
ドラマ化とか、小説化すれば
こんな日本人もいたんだ、って対外的にイメージ上がるかもしれないし、
自信なくしてる日本人も少しは元気になるかもしれない。
なんか、中国に尖閣諸島の件でイニシアチブ取られそうになっているけれど、
民主党も交渉力にはこころもとないね。
こういう仙人みたいなスケールのでかいおじいさんがいたら、
ぜひ今中国と交渉してもらいたいよ。